京葉線「舞浜組」と「幕張組」の断絶から救う?超仕事人の存在

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 今日は2日目です。
 ちょうど「毎日更新」の時期とかぶるため、昨年一昨年も同じネタなのですが、今年もちょうどその時期にあたってしまい、今朝は早くから千葉の幕張メッセまで出かけてきました。

 都心の西側に住む者にとって、幕張の大型展示・イベント会場は、時にその遠さを恨むことさえあるほどの距離。唯一救われるのが海沿いを走る京葉線の車窓の良さです。

 京葉線を走る電車の窓から見える海やら工場地帯の愉快さは一昨年も書いていますし、拙著『週末鉄道紀行』でも触れたので繰り返しませんが、私個人的には都心でもっとも好車窓ではないかと思っています。
 今は蒲鉾板のようなマンションが林立していますが、元は貨物のバイパス線として、当時は人がほとんど住んでいない湾岸を通したゆえでしょう。

 そしてもう一つ、こちらは楽しみではありませんが、朝の車内の客層をウオッチすることも、私のなかでの密かな「京葉線名物」みたいなものかもしれません。

 これは京葉線沿線の千葉県浦安市に、誰もが知る「東京」を冠した仮装遊園地がありますが、こちらに用がある客層と、社用(業務命令)で幕張での展示会へ行かざるを得ない層が朝の数少ない下り快速電車に固まっていることが醸し出す独特の雰囲気があるのです。

 東京へ向かう上りは通勤ラッシュでそれどころではないのですが、下りはその2つの客層しか乗っていないのではないか、と思うほどくっきり色分けされています。

 千葉県浦安市の東京仮装園へ遊びに行くファミリーなり、カップルなり、グループなりはとにかく朝からハイテンション。すでにネズミをモティイフとしたキャラクタの耳のおもちゃなんかを頭に乗っけていたりして、楽しそうなことこの上ありません。そして少しうるさい......。
 それを取り巻くのが、どんよりとした色の服装で眠そうな顔で重そうな荷物を抱えて狭いロングシートで小さくなった男集団「海浜幕張組」です。
 一見すると、東京駅からの客は特に「なんで幕張はこんな遠いんだよ!」と舌打ちしそうな面々ばかりです。京葉線ホームの遠さも輪をかけて愉快でない気持ちにさせているのかもしれません。その気持ちはわかります。

 とにかく、京葉線快速列車の東京→舞浜間で見られるこの二組のコントラストが印象的なのです。多分、一生分かり合うことはないくらいの深い断絶感が車内に生まれています。

 実はこの火と油みたいな二層のほかに、もう一つの層があるんです。これがすごい。

 車内を見渡すと、「舞浜組」と似たような年代の女性たちがそこかしこの座席に散らばっていることに気づくと思います。これが第三の層。浦安の世界的テーマパークで働く「キャスト」と呼ばれる人々です。

 この「舞浜キャスト組」、車内では一番落ち着いています。陰鬱な「海浜幕張組」のなかにいても違和感がないですし、自分たちのお客様である「舞浜遊戯一団」も当然、温かい目で見守っています。

 彼女らは仕事へ行くのですから、頬が緩んだ舞浜遊戯一団と比べると、眠そうな顔もちらほらいますが、それでも総じて涼しげなのです。舞浜駅に着くと、一斉に淡々とそれでいて軽やかに下車していく。

 例えば朝の成田空港行のJR快速列車や京成の料金不要特急などに乗ると、化粧と香水の匂いを漂わせた派手目な若い男女の一団が空港駅で早足で降りて行き、「ああ、華やかな空港関係者っぽいなあ」と思ったりするのですが、舞浜の人々はほぼ全員が労働とか働いているとかいう気配をほとんど感じさせないのです。客か従業員か、見ただけではわからないくらいです。
 浦安市の「夢の国」では客やキャラクターが主役であるために、従業員は縁の下から支えるという心構えが染み着いているせいなのでしょうか。

 いやー、さすがプロだな、と今日も感心しながら、私は薄暗い「海浜幕張憂愁組」の一員として、舞浜駅を通り過ぎたのでした。