忘れ得ぬ2011年、記憶に刻まれる日本の旅(前編)

 夏以来、相当に日があいてしまいすみません。気がつくともう年の瀬となっていました。
 今年、2011(平成23)年は自分の人生のなかでも忘れられない年となりました。3月11日の惨事を目の当たりにしたことと、仕事上の移動が相次いでほぼ日本を一周したことは、この先も自分の記憶のなかに深く刻み続けるだろうと思っています。

 そんな一年、旅や鉄道に関係ある話もない話題も含め、2回に分けて思いつくままトピックごとに書き残してみました。

【大震災と災害】鉄道が止まり、やがて悲しき「帰宅難民」

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 3月11日(金)の14時44分くらいまでは、週末の夜が近付き機嫌良く業務に励む平和な午後だったのですが、その後、一瞬にして鉄道が止まってしまうとは思いもよりませんでした。中遠距離通勤なんてものは、鉄道が正常に動いているからこそ、成し得ているものだと痛感させられました。
 これで終わったのかと思ったら、9月21日(水)に首都圏を直撃した台風15号でも同じような目に遭ってしまい...。災害受難の一年でした。

 私の住む横浜最西部の街では、地震当日の長時間と計画停電で4回、台風の際にも1回(30分ほど)と計5回の停電を経験。電気がなければ生活がまったく成り立たないということも痛感させられました。真っ暗な街の寒い家でロウソク1本、誕生日か何かと勘違いした2歳の子が火を点ける度に吹き消していたのは、苦笑いするような思い出です。

 この秋、「地震がほとんど来ないため、本州企業のデータなどのバックアップ地に最適」といった取材をするために訪れていた沖縄本島で、偶然にも震度4の地震に遭ってしまったこともありました。結論として、日本中どこにも地震が来ない場所はない、ということも思い知らされました。

 そして今年、これだけ大自然災害が発生したにも関わらず、鉄道による人的被害がなかった事実は、深く心に刻み込んでおかねば、と思っています。>>関連記事「巨大地震、鉄道の高い安全性に見た一筋の光明」

※写真は東京新聞3月12日朝刊。1面と最終面を同時に使う異例の構成で大地震を報じていた

【新幹線】青森~鹿児島2,200キロ、レールが結ぶ高速列島

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 昨年12月4日に東北新幹線が新青森までの延伸開業に続き、震災翌日の3月12日には九州新幹線が鹿児島中央駅まで全通。ついに本州の北端から南端まで約2,200キロの高速鉄道網が完成することになりました。

 青函トンネルと瀬戸大橋が開通した1988(昭和63)年の「レールが結ぶ一本列島」以来の大きな事業を成し得た年ではなかったでしょうか。

 一人の旅行者としての感想です。
 東京駅から「はやぶさ」に乗り、3時間余で新青森駅に着いた時の愕然とした思いは、忘れられません。
 異常なほどに長いトンネルを抜けると、そこは殺風景な「新青森」と書かれた駅。陸奥湾はどこに消えたんだろう。「一体、ここはどこなんだ?」と。

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 同様に、東京駅から「のぞみ」と「さくら」を乗り継ぎ6時間半、西鹿児島......ではなく鹿児島中央駅という場所に着いた時も似たような思いでした。トンネルを抜けると小東京めいた中都会が出現。「ここは本当に鹿児島なのか?」と。

 しかし、新青森という田圃の真ん中駅から在来線で青森駅へ着き、港の香りを感じて「やっと青森へ来た!」と実感できたように、郵便局名のごとき駅から次の鹿児島駅へ移動し、降灰で黒くなった駅前広場から錦江湾と桜島を仰ぎ見ると、「鹿児島へ着いたぞ~!」と叫びたいくらいに嬉しかったことは、新幹線旅での印象深い思い出です。

※写真右上は東北新幹線「はやぶさ」、左下は山陽・九州新幹線「みずほ」

【出張】飛行機嫌いが推奨する航空会社は「スカイマーク」

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 旅行をするうえでは、新幹線の旅は非常に味気ないのですが、仕事での出張時には大いに役立つ心強い存在です。
 今年は、会社員として日本の主要都市へ行く機会が多々あり、新幹線には本当に助けられました。大阪、名古屋は言うに及ばず、東京から博多まででも片道わずか5時間。飛行機など乗らなくても十分に対応できます。

 ただ、沖縄と札幌だけは、新幹線でも対応が難しい場所でした。レールで結ばれている札幌は在来線との併用や夜行列車で何とかなるにしても、沖縄は苦労しました。
 東京から鹿児島までは一気に新幹線で行けるものの、その先に横たわる東シナ海。奄美各島立ち寄りの路線フェリーに乗って26時間。東京から35時間ほどかけて那覇まで行きましたが、さすがに往復ともそれをする時間的余裕も体力もありませんでした。

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 もう一つ残念なのは、陸路や海路を使うと、飛行機と比べ料金・運賃が高いのです。
 たとえば東京から新幹線(自由席)+フェリー(2等)で沖縄へ行った場合、片道で4万2630円。JL(JAL)やNH(ANA)の繁忙期普通運賃並みのお金がかかるのです。いくら会社の経費とはいえ......。

 で、仕方がなく復路は飛行機を使うのですが、JLやNHの運賃の複雑巧妙さは一体何なのでしょう。普通運賃を4万円超に設定していますが、その金額の意味は何?と思えるくらい、「なんたら割」とか「ナニ得」とか、怪奇な割引制度が多々設けられていて、調べる時間を考えると、乗る前から気がそがれてしまいます。
 そこで有難いのがスカイマーク(BC)です。東京~沖縄間は1万9800円。これが普通運賃。大手2社の半額です。
 BCにも「なんとか割」はありますが、単に1/3/5日前に買えばさらに3000~6000円を引いてくれるだけの制度なので単純明快です。普通運賃ならいつでも買えて変更も容易です。

 ただし、安いゆえに当然機内サービスは皆無。座席にはボロボロになるまで読まれたらしき薄い機内誌と、ヨレヨレになった緊急脱出案内パンフレットがあるだけ。「お客様の荷物は、間違えるなどのトラブルをなくすため自身で管理してください」とか理由を付けて、機内アテンダントは手荷物収納さえも手伝ってはくれません。が、単に短時間移動するための手段として、スカイマークのシンプルさは飛行機嫌いの人間にとっても非常に共感を覚えるものでした。

※写真右上は東京駅から鹿児島中央駅までの乗車券・自由席特急券(2万8030円)、左下はスカイマークの搭乗風景(那覇空港)

【夜行列車】出張族に欠かせない「北斗星」と「サンライズ」

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 全国へ出張するなかで、夜行列車も何度か使いました。

 東京~札幌を結ぶ寝台特急「北斗星」は上野発19時3分、札幌着は11時15分。札幌で昼からの用事だったために、それほど無理なく利用できました。
 1人用の個室寝台「ソロ」は快適ですし(特にJR北海道仕様の5~6号車)、シャワー室も食堂車もあります。なにより、函館から先の車窓が素晴らしいこと!朝の駒ヶ岳と噴火湾を眺めながらの移動は、思わず業務出張ということを忘れそうになるほど、旅心をくすぐられます。

 上野から札幌まで、B寝台ソロを使って片道2万7170円。航空大手2社の普通運賃3万3500円より6000円以上も安いのですから、経費的にも許容範囲内ではないでしょうか。ただし、B寝台の個室内にコンセントがないのは少し残念ですが。

 風前のともしびとなった夜行列車のなかで、西への出張時に最も重宝するのが寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」です。
 ここで何度も書いていますが、深夜の大阪駅から東京へ帰宅する時にも使えますし(上り列車のみ大阪駅に停車)、実は東京から山陽・九州方面への移動にも最適なのです。

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 それを伝えたく、こんな表を密かに作ってみました
 岡山駅で朝一番の山陽・九州新幹線「みずほ」601号に乗り継ぐことで、広島や北九州などへは羽田朝一番の飛行機より早く着くことができるのです。
 今年の秋、博多で朝から用事があったので、他の人は先に現地入りして前泊するなか、私一人がこの乗り継ぎを試してみました。サンライズが出発する前日22時前までは仕事もできますし、個室寝台車シングルもビジネスホテル並みの居住性。ここまで使える夜行列車だったのか!と感心したものです。個室内にコンセントもありますので仕事をする方にも最適です。

 南九州方面へも便利です。熊本が9時ちょうど、鹿児島中央でも9時46分着。市街地からやたら遠い両空港からの移動を考えると、「サンライズ」+「新幹線みずほ」の九州出張は相当に使えるパターンではないでしょうか。実際、岡山駅ではスーツ姿の男性が「みずほ」に乗り換えている姿を多く見かけました。
 「サンライズ」は格安の「ノビノビ座席」を除き個室寝台ですし、新幹線「みずほ」の指定席車両は2列シートで快適なのもポイントです。ぜひ一度試してみてください。

※写真右上は寝台特急「北斗星」、左下は寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のB寝台シングル

 ずいぶん長くなってしまいそうなので、この辺で他の項目は次回「後編」に書くことにします。