函館本線(その3)・小樽→札幌→岩見沢→旭川間の風景

北海道の鉄道旅の記憶と記録を残しています。函館本線の3回目は小樽から札幌を経由し、岩見沢から旭川へ向かうまでの風景です。

小樽から快速「エアポート」に乗車、小樽築港を過ぎる

小樽港南端の平磯岬を若竹トンネルで超えると、日本海の波打ち際に出た。海まで十メートルも離れていない場所を走っている。目線の下に低い防波堤があるだけで、高波が来ると、列車ごとさらわれてしまいそうだ。吹雪で空と海原が溶けてしまって、遠くは見えない。海岸は砕けた波の水泡が覆い、流氷に埋め尽くされたかのようである。

岩見沢から旭川行の普通列車に乗る

一六時五七分、旭川行の普通列車は、ガシャという鈍い音を立て、夜中のように暗い岩見沢を出発。先ほどの最新特急電車と対照的な国鉄時代の古参電車は、室内にはミシミシという響きが伝わってきて、走り出してもなかなか加速していかない。機関車が牽(ひ)く客車列車に乗っているようで、昔を思い出し、にやりと微笑んでしまう。

普通列車は旭川までの途中一四駅に停車し、一時間四〇分で走る。長距離停車が少ないので、他便に比べると所要時間は短い部類である。

列車は空知平野を坦々と北へ向かって走っている。まだ夕方五時を過ぎたばかりなのに、窓にはぽつぽつと人家の灯りが遠くに映るくらいで、寂しい風景が続く。昼間なら、一面の白い原野が広がって、北海道らしさが感じられる区間である。黄色い光を浴びたホームに停まるごとに、一人二人と降りていき、車内も空いてきた。

深川駅から旭川駅へ

北空知平野がまもなく尽きる。深川市街外れの納内(おさむない)を出た赤い電車は、空知と上川を隔てる常盤山の長いトンネルに入った。隧道(ずいどう)の外は神居古潭(かむいこたん)だ。アイヌ語で神の居所を意味する渓谷で、昔はここに沿って列車が走っていた。今は大半が暗闇の中を通るけれど、私はこの区間が函館本線で最後となる五つ目のハイライトだと思っている。

(「函館本線」編おわり)

宗谷本線(その1)旭川→名寄→音威子府間の風景

函館本線(その2)・長万部→小樽間(山線)の風景

(出典:2009年「週末鉄道紀行」)