再開2日目になりました。
JR北海道が再来月(10月)27日に独自のダイヤ改正を行うことが先日発表されました。(詳細はこちら[PDF])
札幌から石狩当別を通り新十津川まで80km弱を結んでいる札沼(さっしょう)線のうち、途中駅の北海道医療大学駅まで「学園都市線」と称している札幌近郊の約30km区間を電化。これに伴う改正で、10月からは札幌通勤圏の電車が一体化して運行されることになるそうです。
今までディーゼルカー(気動車)で運転していた札沼線の一部が電化によって高速化・増発されて「便利」になる一方、古くから電化している室蘭本線の一部区間(室蘭~苫小牧)では、逆に電車からディーゼルカー化して「不便」にするという変更も予定されています。
室蘭本線は、室蘭~東室蘭(室蘭)~苫小牧(正確には次の沼ノ端駅)間で電化され、特急電車の「すずらん」や普通列車は主に国鉄時代の赤い電車(右上写真)で走っていたのですが、10月の改正後は室蘭と苫小牧間を結ぶ普通「電車」をディーゼルカーによるワンマン運転の普通「列車」に変えるというのです。
「電車」の高速性を捨てて、わざわざ速度が遅い「ディーゼルカー」にグレードダウンする格好となります。
ここを読んでいるような鉄道に詳しい方々は「あ、なるほど」と事情が分かるとは思いますが、これはなかなか見られない不思議な「改正」です。
一言で言うと、「客がいないから電車を動かすのがもったいない!」ということが理由です。
JR北海道の「電車」は最短で3両編成にしかならないのですが、「ディーゼルカー」にすれば1両だけでも運転することができますし、車掌を載せないワンマン運転も可能です。運行にかかる無駄が省けるというわけです。
もう一つは、短編成やワンマン化に対応した新しい電車を造るお金がないという事情もあるようです。
電化しているのに、電車ではなくディーゼルカーが走っている場所は全国に幾つかあります。
有名なところでは羽越本線の村上~酒田間で、特急は「電車」ですが、普通列車はすべてディーゼルカーで運転されています。江差線の五稜郭~木古内間も「津軽海峡線」として電化されてますが、普通列車はディーゼルカーしかありません。
これらに共通しているのは、「交流」で電化されている区間だということです。羽越本線は途中まで直流区間も交じっています。
日本の主要路線の多くは「直流」での電化ですが、直流型の電車に比べ、交流型電車を造るためには余分なコストがかかるといわれています。
交直両用の電車だとさらにコスト増となるために、羽越本線では直流と交流が交わる区間だけ(この区間の客が少ないという理由もありそうですが)、ずっとディーゼルカーのままで放置されています。
日本の鉄道界に君臨するJR東日本でさえそんな状態ですから、JR北海道が車両を新造するのはかなり困難なことといえます。旧型の赤い国鉄型電車をまだ使っているくらいですから、その苦しさが分かるかと思います。
電車化と非電車化が同時に行われるという稀有なJR北海道のダイヤ改正。この情報を見ながら、今後は他の「電化ローカル路線」で同じようなことが起きるかもしれない、とふと思いました。
北海道の岩見沢~旭川間なんかも、今の赤い普通電車が老朽化で廃車となったとき、札幌圏で走っているような緑色の新しい電車を客が少ない区間に入れるのか否か。
時速130kmで特急電車がビュンビュン行き交うなか、1~2両のディーゼル普通列車が架線の下をのんびり走っている様子が少し目に浮かんできたりしました。
※写真右上は10月のダイヤ改正で室蘭本線から撤退する国鉄型の711系電車。登場から30~40年経つので廃止は近いとみられる。