「鉄道公安官」という呼称が忘れられようとしている

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 今夜で48回目です。
 昨日、ビジネス雑誌の鉄道特集について書きましたが、現在売っている最新の『ダイヤモンド』8月4日号の特集「JR vs 私鉄~王者JRを猛追する私鉄」内で、鉄道警察隊に関する取材記事が見開きで掲載されています。

 これを読んで驚いたのですが、警視庁の鉄道警察隊には前身である「鉄道公安官」の出身者が今やわずか1人しかいないというのです。
 鉄道公安官は、国鉄内の警察組織として戦後すぐに発足。スリや置き引き、痴漢、暴力事件といった車内や駅での事件を防ぐうえでは欠かせない存在でしたが、1987年の国鉄崩壊とともに、鉄道公安官の制度自体も解体され、鉄道警察隊が担うことになりました。

 民営化前は全国に約2900人もいた鉄道公安官ですが、解体時に警視庁や各道府県警に移籍したり、JR社員になったりしてばらばらになっています。全国一の規模を誇る警視庁でさえ、100名しか鉄道警察隊としては採用しなかったようですから、今は1人だけしかいないのも不思議ではないのかもしれません。

 「赤帽」などとともに、戦後の鉄道を脇から支えた鉄道公安官という名称は、もはや鉄道の現場から消えようとしているようです。JRの経営陣や幹部が今も国鉄出身者で占められているのに、同じ国鉄出身者でも鉄道公安官の世界は、組織はもちろん、出身者群も名称さえも跡形もなく消されようとしています。

 こうなったら、せめてフィクションの世界だけでもその名残を味わいたい!と思うのですが、テレビ朝日系の人気ドラマ『鉄道公安官』(1979~1980年)は、DVD化が熱望されているにも関わらず一向に実現されません。
 30年も前のドラマなのに、動画共有サイトに誰かが主題歌をアップしただけで、テレビ局が削除に勤しんでいます。同時代に同じテレビ局で放映された刑事ドラマの『西部警察』は"野放し"なのに、なぜか鉄道公安官のドラマは徹底的に消され続けているのです。

 著作権の問題なのか、見えない圧力なのか、自主規制なのか、背景になにがあるのかは分かりませんが、「鉄道公安官」という名がこのまま忘れ去られていくような流れになっていることは確かで、非常に寂しい気がしてなりません。

※写真は1979~80年に放送されたテレビ朝日系のドラマ『鉄道公安官』(石立鉄男ら主演)のオープニング画面。主題歌もエンディングテーマの映像も国鉄のカッコよく、旅情あふれる鉄道風景が多々出てきてたまらない気分になります。かつて動画共有サイト「YouTube」にアップされていた動画からキャプチャしたものですが、あっという間に削除されてしまいました......。