乱発されるビジネス誌の鉄道特集、その裏事情を考える

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 今夜で47回目です。このところ酷暑が続きますね......。

 さて、週明けである今朝(月曜日)の新聞には、だいたい『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』(時に『エコノミスト』も)といったビジネス週刊誌の広告が掲載されているのですが、そのうちの一誌、ダイヤモンドが今週号で「JR vs 私鉄~王者JRを猛追する私鉄」と題した鉄道特集を掲載していることを見つけ、思わず駅の売店で買い求めました。

 それにしても最近は「鉄道ブーム」ゆえか、ビジネス誌であっても鉄道を取り上げることが多くなったな、と感じます。
 果たして実態はどうなのか。現在までの5年間、鉄道の特集を掲載したビジネス誌を調べてみました。

▼2012年
・ダイヤモンド(8/4号)「JR vs 私鉄~王者JRを猛追する私鉄」
・東洋経済(2/25号)「鉄道再起動~新幹線特許からホームドア設置まで鉄道大特集」

▼2011年
・ダイヤモンド(7/30号)「世界最強!新幹線~日本の未来を拓けるか」
・東洋経済(4/16号)「徹底検証 鉄道被災~動き出す復興への道筋」
・エコノミスト(3/8号)「日本の鉄道力~世界最高水準の車両とシステムを売れ」
・東洋経済(3/5号)「鉄道最前線~JR・私鉄から車両工場まで80ページ総力特集」

▼2010年
・ダイヤモンド(10/2号)「エアライン vs JR~羽田国際化、新幹線延伸で大激変!」
・COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)(9月号)「『鉄道』が世界を熱くする "新幹線ビジネス"から中国の野望まで」
・東洋経済(4/3号)「鉄道新世紀~JR&私鉄そして『世界の鉄道ビジネス』。76ページ大特集」
・エコノミスト(1/12号)「鉄道の世紀~新興国成長、環境性で需要爆発」

※2010年は東洋経済(7/17号)が「バス大異変~知られざる公共交通の実像」という特集も行っている

▼2009年
・東洋経済(10/10号)「JRの秘密~知られざるコングロマリット」
・東洋経済(7/4号)「鉄道進化論~JR、私鉄、ローカル線...鉄道ビジネス大研究!」

※2009年は東洋経済が3/28号で「日本人の旅大解明~鉄道、旅館・温泉、名物...日本人の旅行スタイルが変わってきた!」という特集も掲載。ビジネス誌以外では『PEN(ペン)』(6/15号)が「やっぱり鉄道は楽しい。デザイン・時刻表・駅弁・模型...ほか」を、『BRUTUS(ブルータス)』(8/1号)が「ニッポン鉄道の旅。列車で行こうどこまでも。」を特集している。

▼2008年
・日経ビジネス(11/10号)「巨大流通業JR(ジャパンリテール)~ルミネ、アトレ、エキュート――消費者呼び込む巨大流通業JR」
・東洋経済(4/19号)「6カ国16都市徹底調査 鉄道革命~モーダルシフト 世界で大復権が始まった」


 以上、私(西村)が把握しているだけでもこれだけあります。(これが全部だとは思いますが、このほかにもありましたらご指摘いただけると助かります)

 この5年を通算すると『東洋経済』が7回、『ダイヤモンド』が3回、『エコノミスト』が2回、『日経ビジネス』が1回、その他月刊誌が1回となっていて、年間平均にすると2.8回。つまり、半年に1回は必ずどこかのビジネス誌が鉄道特集をしていることになります。

 内容はおおむね「日本の鉄道の現状と課題」「世界戦略の行方」という2大テーマに集約され、あの手この手で深掘りしているだけのようにも見えるのですが、ビジネス誌らしく、JRを飛行機や私鉄と対立させてみたり、世界企業と比較してみたり、経営者を直撃したり、ローカル線や寝台列車の収支を独自計算したりと、ちょっと「意地悪」にも見える記事も多く、鉄道専門誌よりも刺激的に感じます。
 そのためか、読むと必ず新しい知識を得ているように思えます。個人的には700円のモトはとれたかな、とおおむね満足しており、それでつい買ってしまうのかもしれません。

 ただ、ちょっと意地悪く?雑誌業界的に見ますと、『東洋経済』が2009年頃にこの分野を切り拓いて好評を得たために、調子に乗って乱発し(時間がないのは分かるが「鉄道被災」の特集はひどかった......)、そんなに売れるのならウチも!と思ったライバル誌の『ダイヤモンド』も無理やり特集を組んでいる感もあります。ゆえに、内容が似ているのかもしれません。

 毎日新聞社の『エコノミスト』はやむなく?上位の2誌を追随するものの、取材陣が不足しているためか内容に若干物足さがあります(少人数でも懸命に書いている取材陣の熱意は感じるが......)。

 一方、日経新聞傘下の『日経ビジネス』は経済界の大御所らしく、唯一取り上げたのはJRでもデパート部門だけ。しかも5年近く前です。「鉄道特集?そんなもんマニアが買うだけだろ!」と無視しているようでもあります。経営層の定期購読者が多い同誌が載せていない現状を見ると、実は鉄道特集ビジネス誌を買っているのは、私のようなマニア会社員だけなのか、とか思ったり、思わなかったり......。

 なんにせよ、これまでの経緯からみると、年内に東洋経済かエコノミストが、はたまた他誌が鉄道特集を組むことが予想されますので、今後も密かに期待して月曜の朝を待っていたりします。こんな人間がいるから、特集を乱発するんだろうな、と思いつつ。

※写真は最近発売されたビジネス誌の「鉄道特集」掲載号