車社会の街で出会った半世紀近く前の古い気動車

p120725p1.jpg
 43回目となりました。
 昨日、埼玉県のあるロードサイドを歩いていましたら、電車の先頭部分(流鉄の電車と思われる)だけを切り取って飾っている建物が突如現れました。

 4車線の広い道路に車がビュンビュン走る車社会の象徴のような街だったので、突然鉄道の残像が現れたことに驚きながらさらに歩くと、今度は茶色の古いディーゼルカーが1両丸ごと登場!

 これはすごい......と思って周りをうかがうと、どうも病院のようです。しかもディーゼルカーの横にはプラットフォームらしきものがあり、ドアも開いていて車内が見学できるようにしてあります。
 恐る恐る病院内に入り、受付の方に頼んでディーゼルカーの車内を見学させてもらいました。

p120725p2.jpg
 このディーゼルカーは、茨城県の「ひたちなか海浜鉄道」(旧茨木交通湊線)から譲り受けた「キハ223」という車両で、国鉄ではキハ22と呼ばれていた気動車と同じタイプ。2009年7月に廃車となったものを譲り受けたようです。

 このキハ223型はもともと北海道の羽幌(はぼろ)にある炭鉱鉄道で使われていたもので、製造は1966(昭和41)年。半世紀近く前に作られた古いディーゼルカーです。

 ひたちなか海浜鉄道で使われていた当時のままで保存され、今にも動き出しそうな雰囲気さえあります。しかも、外装は羽幌炭礦鉄道時代のカラーに戻され、羽幌炭礦のマークまで復元。眺めていると、名前しか知らなかった未知の鉄道が、頭の中でよみがえったようでした。

p120725p3.jpg
 非常に貴重とはいえ、この病院、いったいなんでこんなマニアック?な車両をわざわざ保存しているのだろうか......。
 
 直接お話を聞きたかったのですが、病院内はかなり大きく、混雑していて断念。帰宅後にいろいろ調べてみますと、ここは2010年にオープンしたばかりの「ほしあい眼科」という専門医院で、院長の星合繁さんはかなりの鉄道好きらしく、他にも貴重な車両を所有されているようです。
 しかし、ただのマニアと違うのは、病院という人が集まる場所で誰もが見られるように公開し、しかも「医院のすぐ隣にある電車がトレードマークです」などと保存車両を宣伝用としても活用している点です。これらの車両は、目の前の大きな道路を走っている車からも一目瞭然で目立ちますし、同医院のロゴマークにも鉄道のイラストが使われ、鉄道=同医院というイメージ戦略にも役立っている様子です。

p120725p4.jpg
 貴重な車両の素晴らしい保存のあり方だな、と感心するとともに、もし自分が眼科にかかるような時があれば、こんな病院に行ってみたいな、と思ったのでした(ただ、我が家から1時間半くらいかかるのが大変ですが......)。

 ちなみに場所は埼玉高速鉄道の終点、浦和美園駅から歩いて10~15分くらいの地です。
 東川口駅や春日部駅から独自のシャトルバスも運転しているようですので、お近くの方はぜひ!

 初めての通りがかりの街で面白く貴重なものを見つけ、炎天下の歩行が少しだけは楽しくなった気がしました。