特急電車は、今まで聞いたことがない警笛を連打して停止した

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 12日目になりました。
 土曜日のため会社が休みの今日は、珍しく朝から順調に用事を済ませ、午後の空いた時間に今から書く内容とはまったく別の記事を書きつつあったのですが......。急変しました。

 ここを日頃読んで下さっているような分別ある有識者はともかく、たまたま見てしまったような方で、客観性やいろんな判断能力がない方は飛ばしてください。まったく愉快な内容ではないはずです。

 今日午後、渋谷駅を16時ちょうどに出発した元町・中華街行の特急列車が16時12分に川崎市の武蔵小杉駅を出発し、次の停車駅である菊名駅(横浜市)に向かう途中、横浜市に入ってすぐの日吉駅1番ホームを通過しようとしたところでした。私が今までに聞いたことがないくらい、明らかに異常を知らせるかのような警笛を連打しながら、8両編成の電車が緊急停止しました。

 それから数分後には、同駅近くにある横浜市消防局の救急車と消防車が相次いで出動。その様子を見ていた私は、ただ事ではない雰囲気を感じ、慌てて日吉駅へ急ぎました。

 駅ホームでは、同特急列車の最後尾だけがホーム端に停止し、消防士や救急士が5~6名、警察官、駅員ら数名が慌ただしく線路上で救出活動を行っているようでした。まだ「規制線」が張られていません。
 線路上には、何かの破片なのか、あるいは人間の身体に関わるものなのか、紙ふぶきのようにも見える物が散らばっていて、駅員が淡々とそれを収集していました。

 「現場」であるホームの先端部には、救急車からストレッチャーを運んできた救急隊員や、何らかの救命用具を持った消防隊員が周りを取り囲み、黄色いポリ袋を手にした駅員が複数駆け付け、警察官も慌ただしく行き交っています。
 そのうち、ホーム先端部は消防隊員や警察官らが目隠し用のビニールシートで覆い、何らかの作業が行われ始めました。

 電車が停止して30分近く経った頃、誰も収容(救命)しないまま、ストレッチャーを折り畳んだ救急隊員や消防隊員が次々と撤収。かわりに水を入れたバケツとデッキブラシを持った駅員が現れ、線路上の清掃を始めました。何人かの駅員はワイシャツが真っ黒になるほどです。

 1時間近く経った頃、緊急停止した列車に閉じ込めらたままの乗客らが、最後尾の唯一ホーム上にかかった1つのドアを頼りに順次下車するよう誘導されました。最後に電車から車椅子の女性が降りて、警察の現場検証が終わり、「事故」から1時間半が経とうとした頃でした。警察でも救急隊でもない男性2人が移動式の「寝台」を持って現れました。
 毛布にくるまれた何らかの物体がどこからか運び出され、その寝台に乗せられ運ばれていきました。

 コンコース上には、ひしめく数百人以上が利用客のほとんど気づかないほどに薄い字で「霊柩車」と書かれた葬儀事業者のバンが待ち受け、その物体は2人の男性によって密かにかつ速やかに収容され、どこかへ運ばれていきました。

 男性なのか女性なのか、若いのか年を取っているのか、そもそも毛布にくるまれたものが何なのかがわからないのですが、霊柩車に乗せられたのだから遺体なのでしょう。

 何があって、何のために、この時間に、この場で命を終えなければならなかったのか。通過電車に飛び込む時、いや、巻き込まれてしまった時に何を考えていたのだろうか。
 2人の葬儀業者と一人の警察官と、野次馬の私と、勘良く気づいた何人かの人たちだけにしか知られることもなく、邪魔なもののように安置所から火葬場へと運ばれる遺体。1時間と少し前までは生身の人間だったのに。

 事故なのか自殺なのかは分かりませんし、どこの誰なのか、老若男女の別も分かりません。日々、こんな事故が起こっていることとはいえ、鉄道を愛している人間にとって、それが結果的に命を奪う「道具」となってしまったことに、やりきれない思いが今も抜けません。