夜行列車とローカル鉄道の受難、2012年春のダイヤ改正

120225p01.jpg
 昨年12月以来の更新となってしまいました。
 今年(2012年)3月17日に行われるJRのダイヤ改正、ほとんど善き出来事はないと分かっていながらも、つい改正号の時刻表を買ってしまいました。

 一読して、想像以上に悪い出来事ばかりが目についてしまい、「ダメだこりゃ!」と30分くらいで投げ出してしまいました。35年間くらい喜んで読み続けてきた1150円もする数字の羅列ですが、今回はいいことがまるでないのです。

 そんな悲しい出来事ばかりなのですが、西村流の3月17日ダイヤ改正トピックス(JR&その他)を書いてみます。

▼寝台特急「日本海」(大阪~青森)、夜行急行「きたぐに」(大阪~新潟)廃止、臨時列車化

120225p02.jpg
 寝台特急「日本海」は青函トンネル開業と同時に大阪から函館まで直通する唯一の定期寝台列車となり、大阪駅で「函館行」の文字を見る度に興奮していたものでした。いつの間にか2往復が1往復となり、それも青森止めとなり、そして廃止。確かに大阪から青森や函館まで夜汽車で行く人は少ないのでしょうが、悲しいことこのうえありません。
 大阪からは札幌まで「トワイライトエクスプレス」という寝台列車はありますが、これは臨時の観光列車であり、余暇を楽しむ「クルーズ船」のような存在で夜汽車とはいえません。「日本海」のように生活に根差し、本当に移動しなければならない人が乗っていた夜汽車はもう時代遅れなのでしょう。

120225p03.jpg
 もう一つ、夜行急行「きたぐに」も廃止となりますが、これにより、「自由席」の連結する夜行列車は残り一つ(急行「はまなす」)だけとなり、「急行列車」という存在自体も、定期列車は残るは一つ、「はまなす」だけとなります。
 何も準備しなくとも夜汽車に飛び乗れば、一夜で違う場所へ連れて行ってくれる、そんな旅はもう昔のことなのかもしれません。

 両列車とも「臨時列車」としては残りますが、昨今の傾向を見ていると、残っても1年かな、という感じがします。夜行の臨時列車は何の予告もなく廃止することが大半なので、定期列車の廃止はイコール完全廃止と同じものと見て間違いありません。

▼臨時急行「能登」(上野~金沢)は完全廃止か

 夜行急行「能登」は2010年3月の廃止後も週末や連休、長期休暇中などの臨時列車として運転されてきましたが、2月24日の運転を最後に消えることになりそうです。JR当局からは何のアナウンスもありませんが、3月以降の運転予定は組まれておらず、このまま廃止となる可能性が高そうです。
 2年間、全車指定席の臨時急行として運転されてきましたが、乗客数が期待ほど多くなかったのかもしれません。臨時列車になると、有無を言わさずに廃止されるのが悲しいところです。

▼臨時快速「ムーンライトながら」(東京~大垣)が大幅減便

 ついに夜行列車の「王道」とも言える列車にも廃止の兆しでしょうか。2009年3月の廃止後も「青春18きっぷ」の発売期間には必ず運転されてきた夜行列車ですが、この春の運転日はわずか9日間。昨年(2011年)春は16日間にわたって運転されていましたから、もはや運転取り止めへの布石かと思ってしまいます。

▼「青春18きっぷ」の年間スケジュール、ついに発表せず

 これは悪いことなのか、良いニュースなのか実は分からないのですが、毎年春前に発表していた年間の発売スケジュールが今年は直近の春季分しか発表されませんでした。JRは「夏季用、冬季用については決まり次第別途お知らせいたします」としていますが、果たして何を企んでいるのか。
 「北海道&東日本パス」の時のように、利用者にとって喜ばしい改正があればいいのですが。JR6社による会合で改廃などの議論をリードしているとみられるJR東日本とJR東海の「良心」に期待したいところです。

▼「周遊きっぷ」を大幅廃止、残るは13ゾーンに

syuyukipp.gif
 分割・民営化から10年が経過したころです。かつて学生格安旅行の友だった「ワイド周遊券」「ミニ周遊券」「一般周遊券」を廃止したいという機運が高まりました。「儲けにならん!」「急行列車にしか乗れないなんて実態に合わん!」ということで、1998年4月に登場したのが「周遊きっぷ」です。

 JR某社が東海道新幹線を割引運賃で乗せたくないあまり、複雑怪奇なルールをさらに難しくしてしまい、さらには発券も極めて面倒にしたのでJR各社は売る気ゼロ。観光列車が大好きなJR某社は新規開業の新幹線をわざわざ自由周遊区間から外すなど、一部JR社は「周遊きっぷ」に対する嫌悪感に満ちていました。確かに「学割」があり、多客期シーズン規制もないという国鉄時代の名残がある割引切符なので、営利第一の民間企業としてはあまり売りたくはなかったのでしょう。
 そんな状態なので利用者も少なく、年々ひっそりと廃止され続けてきましたが、ついに今年は大ナタが振るわれ19ゾーンが廃止されることになりました。
 要するにJR側とすれば「大した儲けにもならんので、自社エリア内と配下JRで使えるオリジナル商品だけ買っとけ!」ということなのかもしれません。民間企業ならではの論理です。だから、JR東日本と北海道、JR東海、JR西日本と四国、JR九州という4つのエリア間には割引切符がほとんどありません。唯一、それをつなぐのが「周遊きっぷ」(「青春18きっぷ」もそう)だったのですが、どこのJR社も「周遊きっぷ」を一切ホームページにさえ載せていない現状を見ると、未来はほぼないと言えるでしょう。情けない......。

▼「岡山発、下関行」昼間に367キロを走る日本一の長距離普通列車が廃止

 これはほとんどニュースになっていないのですが、岡山から下関まで直通していた日本一長距離を走る普通列車がひっそりとダイヤ改正で消えることになりました。
 岡山を6時57分に出て82駅に停車しながら7時間24分かけて下関まで走る列車で、普通・快速の定期列車としては日本一の長さでした。多分、誰も乗り通す人などいないと思うのですが、一度は乗ってみたかった...。詳しくはこちらをご覧ください

▼長野電鉄の「屋代線」、十和田観光鉄道が3月末で廃止へ

120225p04.jpg
 廃止、廃止ばかり書いていたら嫌になってきました。JR当局なら「見直し」とか言うのでしょうが、本当にそんなニュースしかないのです。

 かつて信越本線の駅だった屋代(現しなの鉄道)の片隅にある古いホームからひっそりと出ていたローカル鉄道が廃止と相成りました。

 一方、青森県の十和田観光鉄道は、かつて東北本線の三沢駅(現青い森鉄道)から十和田市駅までを結んでいる鉄道です。

 両鉄道が廃止されるのは乗客減が理由なのですが、その背景の一つに新幹線の影響があるのではないか、と思うのは私だけでしょうか。かつて在来線の「大幹線」だった路線が赤字必至の第三セクターのローカル線に落ちてしまい、そこから分岐している鉄道はさらに苦しくなる、という構図がこの2路線の廃止から見えてくるように思えます。

 E5系が増えるとか、九州直通列車が増えるとか、JR当局によって華々しく喧伝されるダイヤ改正の影で、私にとっては嬉しいことがほとんどない春を迎えそうです。

 あまりにマイナス面が大きすぎて気付きませんが、新しい割引切符の発売など、少しは良きことがないこともないので、こちらの「青春18きっぷ・フリーきっぷリンク集」もぜひご覧ください!