紙から電子版へ、「本」の変革が始まる日?(「電子書籍」超入門講座)

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 14日目です。
 昨夜の内容を今、あらためて読んでみると、いかにも泥酔者が頑張って「素面」装い書いたかのような感が漂っていました。。自分への戒め?としてあえて直さずに放置しておこうと思います。

 さて、本日12月10日(書いているうちに日が変わってしまいましたが)は、大げさに言えば日本の「電子書籍」が始まった記念すべき日かもしれません。

 ソニーが「Reader(リーダー)」という電子書籍用の専用端末(電子ブックリーダーとも言います)を発売し、同時にシャープも「GALAPAGOS(ガラパゴス)」と名付けた電子書籍向けの端末を新発売しています。

 「電子書籍」というものは一体何なのかということですが、
 1:本屋に売っている「本」全般
 2:マンガ
 3:雑誌
 4:新聞
 5:教科書・教材(デジタル教科書・教材とも言う)
 こんなものを「電子化」し、専用端末(電子ブックリーダー)をはじめ、携帯電話やスマートフォン(iPhoneとかAndroid)、iPad、PCで読めるようにしたものの総称です。(実は明確な定義はありません)
 今日、日本の超大手メーカー2社が電子書籍の専用端末と、電子書籍を初めて同時に売り出したのです。

 多分、この分野にお詳しい方なら、「おいおい、そりゃ違うよ、電子書籍端末は昔あったんだよ。そもそも2003年にパナソニックがシグマブックというのを発売してだな、翌年にはソニーもリブリエという専用端末を売り始めたけど失敗したんだ」などと言いたいところでしょうが、過去のことを書くと分かりづらくなるのでここでは飛ばします。

101210p02.jpg 今、米国では書籍の半分程度が電子版(電子書籍)で読まれているといわれています。
 その立役者がAmazon(アマゾン)とアップル(iPhoneとiPadを作っている会社)で、特にアマゾンの「Kindle(キンドル)」という電子書籍用の専用端末(電子ブックリーダー)が相当に浸透しているようです。
 昨年あたりから、「この人たちが電子書籍を売りに日本へやってくる!」という噂が出版・IT関連業界全体に広まりまして、「日本は日本で団結しながら、黒船なんてやっけよう!!」となったわけです。その先陣が今日のソニーとシャープというわけです。(「黒船」は噂だけで未だ来てません)
 ソニー陣営はKDDI(au)や凸版印刷、朝日新聞と、シャープのほうはツタヤ(CCC)と「連合」を組んでいます。
 ちなみに、NTTドコモは大日本印刷(傘下に紀伊国屋とかジュンク堂を持つ)と「超巨大連合」を構築中。ソフトバンクはiPhoneやiPadを発売しているため、アップルに気を使ってかあまり表だった「日本連合」は組んでいません。

 で、今後どうなるのか、長い文章を読むのはご面倒だと思いますので、FAQ方式で書いてみます。
 なお、すべて私の私見と予測なので、外れたらすみません。

Q:「紙」の本はなくなるのか?
A:読者のニーズがある限りなく絶対なくなりません。今も音楽CDやカセットテープが売っているのと同じです。

Q:電子書籍はどのくらい普及するのか?
A:この3年以内に「本」を読んでいる層の2~3割は電子版に移行することが予測されます。

Q:電子書籍なんて何がいいのか分からない。紙がいいに決まってる。
A:電子書籍の良さは本を持ち歩く手間や重さから解放されることではないでしょうか。ただ、機種によっては見づらかったりします。操作も面倒です。それから専用端末を買うお金も必要です。ようはその人の好みの問題だと思います。「紙」で読むか、「電子」で読むかは購入者(読者)が決めることであり、メーカー(出版社)はそれに応じて供給するだけです。
 
Q:今すぐ村上春樹の『1Q84』を電子書籍で読みたい!
A:あの本、やたら重いですからね。でも無理です。現段階では新刊や話題の本は皆無に等しい状態です。ソニー「リーダー」もシャープ「ガラパゴス」も3万冊程度の「本」しかなく、それも古いものが中心です。あ、同じ村上でも「龍」さんなら、電子書籍は多いかもしれませんよ。自分で電子出版社を作ったくらいですから。新刊・話題の本はこれから徐々にですが「電子版」が増えていくとは思います。

Q:なぜすぐに電子書籍にならないのか?
A:一言で言うと出版社のヤル気がないからです。以上......というのも、今まで「紙」で商売してきて、いきなり「電子」に変えるのも難しいんです。細かい話は山ほどありますが、大きな理由はそんなところです。(だって、筆者との再契約とか面倒なんだもん。余計な仕事が増えるだけだし、などと現場の声を代弁してみます)。あと、インターネットの世界は「米国」から生まれたものなので、日本語の「縦書き」に弱いという側面も少し理由に入るかもしれません。

Q:電子書籍は印刷費もかかってないのに、なんで「紙」と似た値段で売ってるんだ?
A:これも出版社のヤル気の問題かと。「紙」版が売れなくなったら困りますし、「本屋」さんに気を使ってるんですよ。新聞社も自社の「新聞販売店」をつぶすわけにもいかないですから...。日経新聞の電子版が高いのもそのためなんでしょうね。

Q:ソニー「リーダー」とシャープ「ガラパゴス」、買うならどっちがいいのか?
A:「リーダー」は本体価格が2万円~、「ガラパゴス」は3万9800円~です。文字の「本」が好きな人は「リーダー」。目が疲れづらいです。雑誌や新聞、映画なども含め何でも見たい人は「ガラパゴス」かもしれません。

Q:今、電子書籍用の端末(電子ブックリーダー)を買うべきか?
A:人に見せびらかして自慢したいならぜひ今すぐどうぞ。本当に電子で「読書」を楽しみたいならやめたほうがいいではないでしょうか。今回発売された「リーダー」はインターネットにさえつながりません(そのうちネット対応版が出ます)。なにより、3万冊の有料「古本」を突き付けられても......。ちなみに今お持ちのスマートフォンや携帯(もちろんPCも)でも十分に電子書籍は読めます。

Q:アマゾンの「キンドル」はいつ日本で発売するの? アップルもいつになったら日本語の本を売り始めるの?
A:そんなの日本で明確に答えられる人はいないかと。一つ言えるのはここは日本ですから、アメリカのように物事はそう簡単には進まず、出版社の抵抗もあって、「本が思うように集まっていない」ともささやかれています。それでも来年(2011年)には、そろそろお越しになると思うんですが。

 以上です。つい長くなってしまいました...。この分野にご興味がありましたら、そのうち、また続編を書く、かもしれません。

 で、今日の写真です。
 上のiPhone(アイフォーン※大手マスコミ風の振り仮名です。口語では「アイフォン」なのに某ドアホン会社の登録商標があるので無理に「フォーン」と伸ばしている、少し笑えますね)に入った拙著の写真、群馬県のMさんからご提供いただきました。「自力」(自炊と呼ばれています)で本をスキャンし、iPhoneでお読み頂いているとのこと。本当に嬉しい限りです。最近、こういう形で紙の本をスキャンして電子版を自作するのが一部で流行しています。これは出版社などの動きが遅いということの現れかもしれませんね。
 下の写真はシャープの「ガラパゴス」で週刊誌を読んでいる写真です。確かにこれなら満員電車でも読めるから便利!かもしれません。だけど、携帯電話のほかにこれをもう一台持つのは面倒な気もします。ソフトバンクからも似たような形の「ガラパゴス」(3D対応が余計ですが)が出ますので、携帯電話と兼用の機種にしたほうがいいかもしれません。